☆香月の庵リターンズ☆
原作アラミススキー。「アニ三アラミスは原作アラミスの好みのタイプだよね!」というコンセプトのもと、原作アラミス×アニ三アラミスという異色カップリングをネットの片隅で限りなく追求しています。あと原作考察(ほぼアラミス関係)。
11巻15章②
- 2014/07/31 (Thu) |
- 中文版ダル物比較 |
- CM(0) |
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何が気になっているかっていうとね、この部分ですよ。
「高貴な精神の持ち主ではないにせよ、優れた才気に恵まれ、その才気をひけらかすためにさまざまな悪事を企んできたとも言えるだろう」
いやいやいや待て待て待て。「才気をひけらかす」って…アラミスなにかっていうと秘密主義だったじゃん?むしろこっそりやりたい系だったじゃん!ダルってば酷いなぁ、アラミスのことそんな自慢したがり屋さんみたいに思ってたのかよ!?
(そりゃまぁ1部では中途半端なラテン語知識披露してアトスにツッコまれたり、カッコいいこと言おうとしてハメ外したりなんて書かれてた記憶があるけど、アレ悪事とは全然関係ないしね!!)
…なんて思ったのですが。
ここの中文が、なかなか面白いことになっていたんですね(笑)。
まずは中文訳書Aから。
●即使不是才华出众,他是个聪明过人。他从来是做了坏事反倒显得更为光彩。
「(才気を)ひけらかす」の部分には「光彩」という言葉が使われているのですが、「光彩」の意味は「彩り」とか「栄光」「面目を施す(=評価を高める、体面・名誉を保つ)」。「才华出众」は「才能が大衆より抜きんでている」、「聪明过人」は「人並み外れて聡明である」、「即使不是~」は「例え~でなかったとしても」。「反倒」は「却って」とか「逆に」、「更为」は「より一層(~になる)」。
だからざっくりとだけど訳すとするとこんな感じになるかしら。
「例え彼の才能が非凡なものでなかったにしても、彼は人並み以上に賢い人であった。これまでも悪事を企むことでより一層評価を高めてきた」
うんなんかちょっと分かりずらいな…。でも「才気をひけらかす」ではない気がするんだよね。ただまぁ少なくとも、「悪事を企む(做坏事)」とその後の「光彩」が逆説の副詞でつながれているから、「显得更为光彩」のフレーズは一般的な「悪事を企むこと」に対するイメージとは反対の意味合いなのは確かなんだろうなぁ。
最初見たとき「彼は悪事を企むことでより一層彩(輝き)を増す」→「はかりごとしているときが一番生き生きしてるよね!」という風に読んで「ぶはwwww」と噴きそうになってしまったんですがwむしろそんな風に取った方がいいんだろうかw
続いて訳書B。
●如果说他的内心不高尚,他在精神上却很慷慨,他作坏事只不过为了想稍稍出一下风头。
「(才気を)ひけらかす」の部分に使われているのは「出(一下)风头」。「风头」には「世間をあっといわせる」「大いに面目を施す」という意味もあるんだけど、元々は「自分の才能をおおっぴらに世間に示す」という意味で、そこから転じて「でしゃばる」とか「ひけらかす」というネガティブな意味としても使われるんだよね。
「出风头」は「ひけらかす」という意味の熟語として辞書にも載ってるんだけど。
だからこの部分だけ読むとダル物とほぼ言ってること同じ気がする。「只不过」=「ただ~にすぎない」、「为了想稍稍~」=「少し~したいがため」、「一下」=「ちょっと~する」があるので、「彼が悪事を企むのはほんの少し自分をひけらかしたいだけにすぎないのだ。」と、幾分トーンは控えめな感じするけど。
ただねー、訳書Bのこのフレーズ、ちょっとひっかかる部分があるんだよねぇ。そこはどこかというと、その直前の「他在精神上却很慷慨」のところ。「慷慨」を辞書で引くと、
1.義憤に燃えて激高しやすい
2.気前が良い、寛大である
ってのが出てくるんだよね。
前回のコメントレスで藤乃さんから教えてもらった原文をグーグル翻訳にかけて、出て来た単語が原文のどの単語と対応しているのか見てみたら、この「慷慨」の部分は「Généreux」に当たるらしいんだけど、これは英語の「Generous」に相当し、「Generous」はどんな意味かっていうと、上の「慷慨」の2の意味。
それを踏まえて「如果说他的内心不高尚,他在精神上却很慷慨」の部分を日本語にすると
「もし、彼の心の内が崇高ではないと言うならば、彼は寛大な精神の持ち主であり、彼が悪事を企むのはほんの少し自分をひけらかしたいだけにすぎないのだ」
―良く分からん(笑)。なんで寛大な精神の持ち主が悪事を企んで自分をひけらかそうとするんだよw
ていうかそもそも、「義憤に燃えて激高しやすい」と「気前が良い、寛大である」って真逆の意味じゃないの!?それが同じ言葉になってるってどういうこと!?しかも辞書引くと最初に「義憤に燃えて激高しやすい」が出てくるってことは、読む人ほとんどがこっちのニュアンスで取るってことだよね…?原文が「寛大である」「気前がいい」の意味だったらもっと他に言葉あるだろうに…なぜ敢えて「慷慨」と訳したんだろう?もしかして「Généreux」には「義憤に燃えて激高しやすい」に近い意味とかあったりするの?という疑問が浮かび…。
英語の辞書とにらめっこしてふと目に留まったのが「Generous」の起源。これは古くは「高貴な生まれである」という意味もあるそうで、そもそもがラテン語の「貴族生まれ(generosus)」を語源としているとか。この「貴族生まれ」→「高貴な生まれである」というところから派生して現代の「寛大な」とか「気前がいい」という意味につながって行ったらしい。(高貴な生まれの人は寛大で気前がいいため)
ラテン語起源ってことは、他のヨーロッパ言語にもこの言葉が英語やフランス語と近いニュアンスの言葉としてあるってことだよね?と思って、身内にスペイン語分かる人がいるので、「スペイン語で英語のGenerousに当たる言葉ってどういう意味?」と聞いてみたら
「英語と同じだよ。寛大だとか気前がいいとか…」
「起源がラテン語の『貴族生まれ』らしいんだけど、『貴族の生れである→高貴な生まれである→高貴な人は心根が清らか』から転じて『不正が許せない』とか『正義感が強い』っていうニュアンスもあったりする?」
「まさしくそれだよ」
…そうか…じゃあフランス語の「Généreux」も似たようなニュアンス持ってる可能性があるってことか…。だから訳書Bの訳者は「Généreux」の訳に敢えて「慷慨」使ったのかも…。まぁ「Généreux」に「激高する」という意味はないみたいだけど…。(中国語でなぜ「義憤に燃えて激高しやすい」と「気前が良い、寛大である」が一緒なのか分からないけど、なんかこう…もともとは「自分の感情を率直に表す」みたいな感じなのかな。「感動しやすい」というか…。いくつか熟語と例文当たってみたらそんな感じがした…)
考えてみると、アラミスの今回の陰謀の動機って、ルイ&コルベールのフーケに対する陰謀が許せなかったから―なんだよね。彼は彼の正義のためにやったのであって…。そして計画を成功させて、絶体絶命の中にあったフーケの地位を回復させて、周りをあっと言わせたかったー。
それ考えると、訳書Bの場合、ダル物の「ひけらかす」の部分は「世間をあっと言わせる」、原文「Généreux」の部分は1の意味で訳したほうがしっくりくるかもしれない。
こんな感じ。
「もし、彼の心の内が崇高ではないと言うならば、彼は義憤に燃えて激高しやすい精神の持ち主であると言え、彼が悪事を企むのはほんの少し(彼の力で)世間をあっと言わせたいだけにすぎないのだ」
(思えば、アラミスって昔から喧嘩っぱやかったよね…。「Généreux」に「激高しやすい」という意味はないのかもしれないけど、アラミスの性格考えると「激高しやすい」っていう言葉は結構合っているのかも…?)
こう解釈すると、「ダルってアラミスのこと良く分かってるんだなぁ」って感じがするね。「君がなんでこんな計画考えたのか良く分かってるよ!陛下とコルベールのフーケ殿に対する仕打ちが許せなかったんだろ!!(T◇T)」みたいな。
しかし、ダル物では「ひけらかす」というネガティブな言葉で訳されていて、中文訳書Aはポジティブなイメージ、訳書Bはどちらにも取れるような言葉が使われている―っていうことは、原文のこの部分はもしかして両方の意味にとれる言葉だったりするのかしら。
考えてみれば、中国もそうだし、ヨーロッパ文化圏なんかももちろんそうだと思うけど、自分の才能を世間におおっぴらに示すのって美徳の1つだよね。日本人は謙虚というか、ついつい謙遜して隠そうとして…むしろ「人前で堂々と自己PRするのってどうなの?」「それって自慢?」みたいな部分あると思うんですが。
それ考えると、中国語の「自分の才能を世間におおっぴらに示す」という意味の言葉にネガティブ&ポジティブ両方の意味合いが含まれているのも分かる気がするし、フランス語の同様の言葉に同様の意味合いが込められていたのだとしても不思議ではない気がする。この辺の言葉の受け止め方って文化的背景もあったりするのかなーなんて、大変興味深く思ったのでした。
しっかし、その前の文章もそうだけど、抽象的な言葉が多くて訳しづらい箇所だわここ。和文も中文も訳者の苦労が目に見えるようだよ…(T^T)
次回に続く(次の1文もなかなか興味深かったのでやるよ!)。
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