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☆香月の庵リターンズ☆

原作アラミススキー。「アニ三アラミスは原作アラミスの好みのタイプだよね!」というコンセプトのもと、原作アラミス×アニ三アラミスという異色カップリングをネットの片隅で限りなく追求しています。あと原作考察(ほぼアラミス関係)。

カテゴリー「中文版ダル物比較」の記事一覧

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翻訳十人十色

仕事柄、色んな人の翻訳を読むのが好きです。原文の同じシーンの翻訳を読み比べるのが好きなんですよね。人によって訳仕方が色々なので、同じところを読んでいても新たな発見があるというか。(ああ、こういう風な訳仕方もあるのかーと参考になったり)

まぁそんなわけでダル物も読み比べしたいんですけど、生憎完訳版が鈴木力衛訳のしかないので、中文版のを読んでたりしています。(自分の好きなシーンとか気になるシーン限定)

で、最近気になったのがダル物10巻41章、アラミスがダルをだまくらかすことに成功した部分。「うまうまと騙されたダルタニャンが立派に見え、自分を信用しているダルタニャンを見ると決まりが悪くなった」のところ。この部分の中訳がこんな風になっているんですよ。

「ダルタニャンを欺けたことはアラミスにとっては勝利を意味したが、友人の信頼を裏切ってしまったことを恥ずかしく感じた」

えっ…まさかアラミス、ダルとの友情で苦悩してたの?しかもこの後のアラミスの、「顔が赤いのを隠すためにダルを抱きしめながら『もう行くのかい?』と言った」の部分は「(自身の)困った表情を隠すために」になってるんだよね。

…アラミス、困ってたんだ!ダル騙したことで心痛んでたんだ!!

いや、邦訳版も中文版も結局は同じことを言っているんでしょうけど、日本語読んだときはアラミスがダルとの友情との間で苦しんでいるとは全然思わなかったんですよね。あっさり(でもなかったけど)騙されたダルの素直さにダルが自分よりも一回り大きな人間に見えて、自分の狡猾さを引け目に感じた、俺って小さな人間だなぁみたいな、そんな受け取り方をしていたので。まぁ単純に私の読解力の問題なんでしょうけど、まさか彼の中でそんな葛藤があったとは夢にも思ってなかったんですよ。ダルを騙すことに成功したのは彼にとっては「勝利」以外の何物でもなかったわけで、そのためにホッと安心することはあっても心痛めたり悩んだりなんて全然しない、むしろ友達だろうが何だろうが平気で人を騙せる人だと思っていたので、びっくりしたんですよね。「僕は昔と同様君のことが好きだ」っていうセリフも、ダルを信じ込ませるためのパフォーマンスだと思ってたから…。

原文がどうなっているのか分からないのですが…あーでも角川版だっけ?映画「仮面の男」の公開に際して販売されたやつ。アレのこのシーンも鈴木先生版と同じような訳になっていたから元々原文はそんな感じで、中文版のはむしろ意訳かな…。

うん、でもこのくらい意訳してくれた方が、11巻の「ダルタニャン、僕がどれだけ君のことを愛していたか、分かってくれたらなぁ!」が嘘ぽくなく聞こえる…(笑)。

そして上の中文版の一文読んで思ったことは、この章でアラミスがダルに「僕がこちら側についていなければ、君だってフーケ様のこと悪く言ってただろう?」って言ってたけど、それはアラミスにとっても言えることで、ダルが友達じゃなかったら、自分の計画を邪魔する最大の障害としてきっと容赦なくダルを排除しようとしていたと思うんだよね。少なくともフィリップに、ダルをそのまま銃士隊長として重用してくださいとは言わなかっただろう。

「僕は昔と同じように君を愛している。僕が君を警戒しているとしたら、それは他の人のせいであって僕たちの友情が変わったわけではない。僕は何をしてもきっと成功するだろうが、その時はきっと君も仲間に入れてあげるよ」(※鈴木先生訳のとはちょっと違ってます)って言ったアラミスの言葉は、(多分ダルとの会話の中での数少ない)彼の心の内から出た本当の本心だったんだろうなー。

おそらくそれまではダルを騙すことは何とも思ってなかったんだろうけど―まぁひょっとしたら多少の罪悪感を抱かないこともなかったのかもしれないけど―、ここにきてダルが自分を信頼しきっているのを見て自分のしていることが恥ずかしくなった…「あ…」って思ったんだなきっと。それを考えるとこの41章のダルとアラミスのやりとりがとても痛々しく思えてくる。今までのダルとアラミスのやりとり…というか腹の探り合いは2人の智略比べを楽しむ感じで読んでたんだけど、もうそんな風には読めないなー。


拍手ありがとうございました!!

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勝手にラテン語と心中するがいいさ!!(笑)

久しぶりに中文版ダル物「二十年後」を開いてみたら、3巻10章、11章のアラミスのセリフにあたる部分が一部ラテン語になっていることに気づきました。

具体的には以下の部分。

・「いずれにせよ引導だけは渡しておいた」(10章)→「彼が臨終する際彼の罪は許してやった(直訳)」の「臨終する際」の部分がラテン語(in articulo mortis)

・「あれは全く幸多き時代だった!」(11章)→「あれは本当に幸福で、楽しい時代だった!(直訳)」の「楽しい時代だった!」がラテン語(delectabile tempus!)

・「残念ながら遠い昔になってしまったね。時は過ぎ去りて帰らず、か」(11章)時は過ぎ去りて帰らず」がラテン語(fugit irreparabile tempus)


…なんつーかアラミスって相変わらずイヤミったらしいっつーかインテリ臭ふかせたがるヤなヤツだな!(笑)(和訳版で全部日本語になっているのは元にした原文が違うのか、2人の間で自然に会話が成立しているのであればわざわざ注釈つける必要ないだろうという編集側の意向が反映された結果なのかはわかりませんが。)

でもここで私驚いたのはそんなことじゃなくてですね。あのダルがアラミスのラテン語交じりの会話にちゃんとついていけるようになっているってことなんですよ!!

クレーヴクールではあんなにラテン語ちんぷんかんぷんで大あくびしてたダルが!!すごいなダル、よく頑張ったよお前!

…ってちょっと感動したんだけど、そういえばその前に「ダルもラテン語が(昔に比べると)少しわかるようになった」なんて描写がどこかにあったような気がする(多分マザランに謁見してたときかその前だったと思う。未確認だけど)。…うんでも彼頑張ったよね!!

あ、でもアラミスってこの時点でダルのラテン語レベルが上がったってこと知らないんだよね?うわーやっぱヤなヤツだお前!!フツー知らないと分かっている奴の前でこういうことしないだろ。クレーヴクールでラテン語交じりの議論についていけないダル見て「フランス語で話しましょう」って司祭に提案していたあの優しさはどこ行った!?(笑)


拍手、ありがとうございました☆

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