☆香月の庵リターンズ☆
原作アラミススキー。「アニ三アラミスは原作アラミスの好みのタイプだよね!」というコンセプトのもと、原作アラミス×アニ三アラミスという異色カップリングをネットの片隅で限りなく追求しています。あと原作考察(ほぼアラミス関係)。
11巻15章③&まとめ
- 2014/08/04 (Mon) |
- 中文版ダル物比較 |
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はい、続きです。
中文原作に関することは別カテゴリーにした方がいいんじゃないかとふと思い始めている今日この頃ですが。
またちょっと長くなったので折りたたんでおります。「続きを読む」からどうぞ。
拍手ありがとうございました!
「老境に入って、もう少しで目的に到達しようとしたとき、一歩足を踏み外して、海の底に転落してしまったのだ」の部分の中国語訳。
<訳書A>
●可是,他就像飞耶斯克家的那位贵族,经营多年,快要达到目的的时候,在船板上偶一失足,跌倒海里去了。
訳⇒しかし、まるでフェリスコ家のあの貴族のように、長年築き上げて来たものが間もなく目標に達しようとしたときに、船の上からうっかり足を踏み外し、海に落ちてしまったのである。
<訳書B>
●在他一生快结束,就要达到目的的时候,就像意大利贵族斐爱斯柯那样在木板上踏了个空,掉到了海里。
訳⇒彼の人生が間もなく終わりを迎え、目標に達しようとしたとき、イタリアの貴族・フィエスコのように木の板から足を踏み外し、海に落ちてしまったのである。
和文にはない「フィエスコ」…コレ、訳書Bに注釈があり、それによると「16世紀のジェノバの貴族。海軍の元帥ドリアに謀反を起こすも突如溺死してしまう。ドイツの作家シラーが彼を題材にした戯曲『ゲヌアにおけるフィエスコの反乱』を書いている」だそう。
とりあえずウィキペディアでフィエスコさんについて(Giovanni Luigi Fieschi[別窓])調べてみたら(日本語なかったので英語ざっと読んだだけですが)、なんか、フィエスコほかジェノバの人達はドリア家からかなりの圧政というか嫌がらせに近いもの?を受けていたらしく、それに耐えかねてクーデターを起こした…ということらしい。で、ドリアを殺害してクーデターを成功させたあと、フィエスコさんはうっかり船から足を踏み外して海に落ちて死んでしまった、と。
…ああ…なんか重なるなーアラミスと。現支配者に対する反抗ってところが。そしてクーデター成功直後、自身のうっかりで転落してしまったところが。さすが、例として出されてるだけあるっていうか…。
そうするとアレだね。もしアラミスの一連の行動がこのフィエスコの謀反になぞらえて語られてているというのであれば、前の文章の「Généreux」の部分は「正義感がある」とか「不正が許せない」みたいなニュアンスで、和文の「才気をひけらかす」の部分は「自分の才気を自慢したい」ではなく、単に「(現状を打破するために)自分の才気を振るう」とか「自分の才気でもって世間をあっと言わせる」という風にとった方がいいのかも―という気がするなぁ。
…まぁ今回含めて計3回、いろいろ書いたけど、とりあえずまとめも兼ねて「裏目ばかり出る~」から訳すと、こんな感じになるかな?と思います。ちょっとぎこちないけど。
まずは訳書B
●アラミスは軍人、司教、外交官であり、上品ではあったが貪欲で狡猾でもあった。彼はこれまで、彼が持つ美しいものを彼自身が醜悪なものへと移っていくための渡り板としていた。もし彼が崇高な心の持ち主でないと言うのであれば、義憤に燃やすい精神の持ち主であると言え、彼が悪事を企むのは自身の才気でもって世間をあっと言わせたいだけにすぎないなのだ。しかし彼の人生が間もなく終わりを迎え、目的を達しようとしたとき、イタリアの貴族フィエスコ(訳注)のように木の板から足を踏み外し、海に落ちてしまったのである。
ふと思ったんだけど訳書Bって、訳書Aやダル物の訳と比べると、フィエスコの故事踏まえて解釈されてるような気もする。「義憤の燃えやすく~」の部分は「気前の良い性格の持ち主であると言え、彼が悪事を企むのは自身の才気を少し周りに示したいだけに過ぎないのだ」と解釈することも可能かもしれないけど。この辺は読み手次第かなぁ…。
次に訳書A。
●アラミスは軍人であり聖職者であり、外交官であり、洗練された人物であると同時に、貪欲でまた狡猾でもあった。彼の一生はあたかも、常に彼の持つ美しいものを踏み台とし、自らを邪なものの中へと身を投じさせているかのようであった。例え彼の才能が非凡なものでなかったにしても、彼は人並み外れて賢い人物であり、これまでも悪事を企むことでより一層その輝きを増してきたのだ。しかし、まるでフィエスコ家のあの貴族のように、長年築き上げて来たものが間もなく目標に達しようとしたときに、船の上からうっかり足を踏み外し、海に落ちてしまったのである。
こっちの方が抽象的。とりあえず「ひけらかす」の部分は「彼の才気がより一層際立つ」とかそんな感じになるようにしてみました。グーグル翻訳使って原文の単語確認したら、「ひけらかす」の部分が英語の「shine」にあたる意味みたいだったから、こっちの方が「抽象的なニュアンスを残しつつ原文に忠実」な感じになるかなー。
(ところで訳書Aもダル物も「Généreux」の部分が「非常に賢い」「才気に恵まれている」と訳されているけど、これは「Généreux」⇒「気前が良い」⇒「気前よく才気を振う」⇒「ふるうだけの才気がある」みたいな解釈なのかしら?)
訳書Aの方に訳注がないのは、多分「ゲヌアにおけるフィエスコの反乱」自体がシラーの戯曲の中でもマイナーな部類らしいので、恐らく調べ切れなかったんだろうな…。ウィキでもヨーロッパ言語のページしかないから、欧米各国では歴史上の人物としても有名だけど、アジア諸国ではそうでもない…って感じだし。今みたいにインターネットが普及した時代ならちゃちゃっと調べられるけど、20年くらい前に発行された本だからねぇ…。他の箇所には結構訳注付いてるから、調べがついてたら絶対載ってると思うんだ…。いや、中国のことだから単に抜け落ちてる可能性もゼロじゃないけどw
同じような理由でダル物にないのも、調べがつかなかったんだろうな…。中文2つに出てて原文にないってことは、原文の方が編集ミスか何かで抜け落ちてたってことでもない限りまずありえないと思うし…。特に本編中に出てくる人物でもないし、あくまで内容補足するための例えだから、悪戯に名前出すよりカットしたほうがっていう判断だったんだろう(注:文芸翻訳などでは良くある手法です)。
ところでダル物って、1・2巻は結構訳注ガンガン入ってた記憶があるんだけど、この11巻も含めて注釈入ってる巻と入ってない巻で結構分かれてるよね。なんか巻が進むにつれて訳注少なくなってるような…?単に編集方針が変わったのか…それとも共訳らしいから、訳注をどの程度入れるかは各翻訳者に任せられてて、翻訳者個人の方針が反映された結果なのか…。下世話なことかもしれないけどちょっと気になってます^^;
そういえば「正義感がある」で思い出したんだけど、「アラミスインターナショナル」っていう会社の「どうして『アラミス』という社名(ブランド)にしたか」という解説に「アラミスは正義心があって~」みたいなこと書かれてたんですよ(このサイト[別窓]の『「ARAMIS」の語源』てとこ)。これ読んだ当初は「いやいや正義心ってw創業者どんだけアラミスに入れ込んでんだよww」と思ったのですが、原文に正義感云々に取れる単語が使われていたのだとしたら、そりゃ納得だよねぇ…なんて思ったのでしたw この会社、元々はイタリアのブランドなんだっけ?イタリア語でどう訳されてるのか俄然気になって来たな(笑)。
(ていうか、中国のダル物スキーさんの間でもアラミスって随分と友達思いな印象抱かれてた感じだったから、もしかしてそいういうイメージがワールドスタンダードだったりするんだろうか・笑)。
ちなみに「ゲヌアにおけるフィエスコの反乱」は日本では「フィエスコの反乱」というタイトルで岩波から小説が出てるっぽいです。1953年発行で現在は重版未定(絶版?)らしいので図書館にでも行かないと手に入らなさそうだけど…。戯曲だから史実をもとに脚色も織り交ぜてあるんだろうけど、機会があったらちょっと読んでみたいかも…。
どうでもいいんだけど、今回取り上げた箇所、やたら抽象的で抒情的な文章だったから、もしそういう文章得意な人が訳すと、アトス臨終のシーンなみに美しくて詩的でステキ文章になるのではないかと勝手に想像しています(笑)。私の訳だとちょとアレですがw
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